━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 8章 コードの連結 ──────────────────────────── では実際に、コードをつなげてみることにします。 ──────────────────────────── 終止形 ──────────────────────────── 終止形は終止形というからわかりにくいので、これはただ単 に、コードの連結に関する基本的なお約束事であると考えれば ちっとも難しくありません。「終止形」、つまり「コードパタ ーン」と読み換えてもらったほうが早いです。だいたい、「終 止」ときたら、それで曲が終わっちゃうような感じでしょ? だから曲中に一度しか使えない…そうではなくて、何が終わる かというと、連続したコード進行がトニックへ落ち着く、つま り、さっき見た「ドミナント→トニック」の例のように、ハー モニーの「終わった感じ」を指して終止形と呼ぶわけなんで、 曲の終わらせ方ではないので注意しましょう。ですから、いき なり終止形から曲が始まることだって実にしばしばありますし、 これから見ていく終止形のパターンの多くは、いかにしてトニ ックへと落ち着かせるか、そのつながり方を分類したものです。 主要コードの機能を覚えていますか? ドミナントはトニッ クへ進むとか、アレのことです。終止形はコードの機能を利用 して、ウジャウジャとハーモニーをひねくる(コードを動かす) 技術であり、時には原則から逸脱した、楽しくスリリングなパ ターンも多く見られますが、いきなりそんな難しいことはやら ないので安心してください。 今回やるのはダイアトニックコードを使った簡単なパターン です。大きく分けたら、3つしかありません。 1.ドミナント終止 2.サブドミナント終止 3.偽終止 表:終止形一覧 ┏━━━━━━━━━━━┯━━━━━━━┯━━━━━━━━━━┓ ┃ │ メジャーキー │ マイナーキー ┃ ┠───────────┼───────┼──────────┨ ┃ ドミナント終止 │V7→I │ V7→Im ┃ ┃ │IV→V7→ I │IVm→V7→ Im ┃ ┃ │IIm→V7→ I│IIm-5→V7→ Im ┃ ┠───────────┼───────┼──────────┨ ┃ サブドミナント終止 │IV→I │IVm→Im ┃ ┃ │IIm→ I │IIm-5→Im ┃ ┠───────────┼───────┼──────────┨ ┃ 偽終止 │V7→IIIm │ V7→bIII ┃ ┃ │V7→VIm │ V7→bVI ┃ ┃ │ │ V7→VIm-5 ┃ ┗━━━━━━━━━━━┷━━━━━━━┷━━━━━━━━━━┛ 表の通り、いずれも細かいバリエーションがありますが、ど れも基本をちょこっと発展させただけのもの。では順に解説し ていきましょう。 ──────────────────────────── 1.ドミナント終止(ドミナントモーション) ドミナント終止には2つのポイントがあります。 ドミナントコードの説明で、ドミナントモーションという機 能について話しました。ドミナント終止はこのことで、ドミナ ント→トニックの流れを指します。ドミナント7thコードに含 まれるトライトーンが、トニックへ進むことで解決されること、 これが第1ポイント。 譜例:トライトーンの解決また、V7→I(マイナーキーではV7→Im。以下同じよう に)における、ルートの完全4度上行(完全5度下行)は、聴 覚上強力な進行感を感じさせるものです。このようなルートの 動き(ルートモーション)を「強進行(4度進行)」といいま す。これが第2ポイント。4度進行はコード進行の基本で、ガ ンガン活用できます。 譜例:ドミナント終止
● 音で確認:ドミナント終止(メジャー)=非対応メニューです ● 音で確認:ドミナント終止(マイナー)=非対応メニューです ドミナント終止には、ドミナントの前にサブドミナントを伴 うパターンも含まれます。IV→V7→I(IVm→V7→Im)の パターン。サブドミナントの機能に、ドミナントを準備する (=導く)というものがあることは説明した通りです。そして このサブドミナントに代理コードを使ったIIm→V7→I(IIm-5 →V7→Im)のパターンは、3つのコード間がすべて強進行で 結ばれるため、非常に「いい感じ」の流れを作ります。これは 俗に「ツー・ファイブ・ワン」と呼ばれる必殺コード進行。な お、ドミナントの代理コードであるVIIm-5は、ドミナント終止 VIIm-5→Iの形で使うことはほとんどありません。 譜例:サブドミナント→ドミナント終止(メジャー)
● 音で確認:SD→D終止=非対応メニューです 譜例:サブドミナント→ドミナント終止(マイナー)
● 音で確認:SD→D終止TYPE=OPM=非対応メニューです ──────────────────────────── 2.サブドミナント終止 サブドミナントから、ドミナントを飛ばして急にトニックへ 進んでしまうパターンです。IV→V7→Iの、ドミナントが省 略された形と見ることもできます。音的には、穏やかな解決と いう感じで、ドミナントモーションほど強力な進行感はありま せんが、逆にこれを利用して、ドミナントモーションの「キツ さ」「恥ずかしさ(笑)」を避けたいときなどによく使います。 同じように、サブドミナントの代理コードを使ったIIm→I (IIm-5→Im)などもアリです。 譜例:サブドミナント終止(メジャー)
● 音で確認:サブドミナント終止TYPE=OPM=非対応メニューです 譜例:サブドミナント終止(マイナー)
● 音で確認:サブドミナント終止TYPE=OPM=非対応メニューです ──────────────────────────── 3.偽終止 ドミナントモーションの一種ですが、これはドミナントの落 ち着き先としてトニックの代理コードを使うパターンです。 V7→I以外のドミナントモーションは全部偽終止ということ になります。ダイアトニック進行ではV7→IIIm、V7→VIm (V7→bIII、V7→bIV、V7→VIm-5)などとなり、ちょっ とした意表を突く効果があるものの、むしろV7→bIIM7など、 ノンダイアトニックコードを使った進行に適用される時に真価 を発揮します。あとでゆっくり攻略しましょう。 譜例:偽終止(メジャー)
● 音で確認 偽終止TYPE=OPM=非対応メニューです 譜例:偽終止(マイナー)
● 音で確認 偽終止TYPE=OPM=非対応メニューです ──────────────────────────── コード進行の基本、終止形ですが、ダイアトニックだけのパ ターンはこんな感じです。図にまとめるとこのようになるでし ょう。 図:終止形
なお、ドミナント終止、サブドミナント終止は、I→V7、 I→IVなどのように、逆進行もまったく問題なく可能です。ソ ウル系の音楽では、マイナーキーのIm→IVm(正しくはIm→ IV7ですが…ブルース進行をやる時にまた説明しましょう)を えんえん繰り返すだけというパターンが非常に多く見られます。 しかし偽終止の逆行に関しては、試してみればわかると思い ますが、自然なつながりという感じがなく、あまり使われませ ん。 ──────────────────────────── 同機能のコードの連結 ──────────────────────────── 終止形はドミナント→トニック、サブドミナント→ドミナン トなどと、違う機能のコードどうしを連結させる時の約束事で した。では機能の同じコードの連結はどうでしょう。トニック →トニック、サブドミナント→サブドミナントなどの進行です。 これも問題なく使うことができます。しかも終止形ほどガチガ チな決まりごともありません。 たとえばメジャーキーでは、主要コード、代理コードあわせ てトニックが3つありましたが(I、IIIm、VIm)、これを使っ てトニックを連続させる場合の法則は特に決まってません。 同じトニック機能を持つコードなら、いくら動かしても「ハー モニーの切り替わり感」にはたいして影響を与えないためです。 IIIm→Iのベースの動きが耳になじまなかったりしますが、こ の辺は自分でパターンを作ってみて、どれが気持ちいいパター ンであるかを耳で判断できます。このうち、代理トニックの連 結である、IIIm→VImの4度進行は非常に多用されるパターン です(その流れで、IImにつなぐと良いのでは、と気づいた人 はエライ!)。 (EOF)